最後の猟期 1日目 殺したらちゃんと「いただきます」しましょう AM 6:25
さて、シカを仕留めました。
我々はこれを食べねばならぬ。
youtubeとかブログでいくつもいくつも違う種類のナイフや銃を紹介しているハンター、私は「『力』に酔いながら狩猟している人」と呼ぶが、そういう人もいる一方、私は撃つことよりは食べることの方を楽しみにして狩猟をしている。ナイフなんて業務用カッター一個あれば解体自体はできるんだし。
食べるために殺す、そのためには素手ではこの巨体とは対峙できない、だから僕らは「力」を手にする。別にシカを殺すための「力」は質量と速度でもいいのだ。車という質量があればいとも簡単に人はシカを殺せてしまう。その場合は狩猟免許も猟銃所持許可もいらないだろう。運よく仕留めたとして、運が悪かったねと声をかけるしかないが。
しかし僕らは狩猟者だ。「力」として銃だったり罠だったりを使える権利を持つ者だ。銃を手にし、弾を飛ばし、シカを仕留める。そして、仕留めるのにかかった以上の時間をつかって、ナイフをつかってしっかりと肉をはぎ取り、持ち帰り、精肉して、調理して、食べる。
私は狩猟という行為の中でも、「精肉して、調理して、食べる」というプロセスをより大事にしたいと考えている。安心して、安全な肉を、おいしく食べてあげるという、最高の供養をしてあげたいのだ。
さて、今日は10月の頭、まだ雪は降っていない。雪が降れば草や地面が覆われ、衛生的に解体することができるのだが、、、地面や草は典型的な肉にとっての汚染物質だ。体毛も外界に触れ続け、泥や汚物や寄生虫が付着した汚染物質である。そして、内臓、とくに胃~腸~肛門にかけての内容物と膀胱にたまった尿も汚染物質である。
これらが肉につかないよう配慮して解体していく。そしてそれらを触った人間の手、ナイフ、これも汚染を媒介するものなので、ビニール手袋を装着してまめに交換したり、ナイフの刃はキッチンペーパーでぬぐったりしながら作業を進めねばならない。
ひとまず車を林道の脇のスペースに突っ込み、近くの繁みを踏み均し、1.8m×1.8mのブルーシートを広げて、草木や地面が鹿に直に触れないような、即席のクリーンな解体場を作った。
林道の先の方ではもう完全に息の根が止まったシカをYが引きずり始めている。
「あーちょっと待って、私も引っ張るんで、こっち持ってきましょう!!」
AM 6:25 約一年半年ぶりくらいの解体がはじまる。雨がおさまるといいんだがなぁ。