コンクリの森deメメントモリ

北の国からお届けします。カエルとかGISとかの話をします。

最後の猟期 1日目 AM 5:49

2018年10月1日、北海道の大部分で狩猟が解禁された。平成30年度猟期のスタートである。

一般にはあまり知られていないが、狩猟とは基本的に秋~冬にしか出来ない活動である。鳥であれば主なターゲットになるカモ類が渡ってくる時期だ。シカ・イノシシなど大型獣は繁殖期の最中で脂が一番乗っている時期であり、狩猟資源保護のために春先からの出産・子育てを阻害しないタイミングで終わるように設定されている。

地域によって期間は異なり、北に行けば長く、南にいくほど短くなっている。道内でも場所により若干期間が異なるが、基本的には10月1日から翌3月末までが猟期とされている。この期間外に行われている行為は狩猟ではなく「駆除」活動であるというのはもう少し認知されてもいいかなと思うし、ハンター・猟友会はそういう自覚をもって活動したほうが良いんじゃないかと思うところである。

 

さて、解禁後1回目の週末に早速出猟してきた。

北海道に移住してから5回目の冬、狩猟を始めてから4回目の猟期であるが、転勤を前に4月に猟銃所持許可を返納したので、今年は銃をカメラに持ちかえての出猟である。

狩猟者登録はしていないし自分で捕まえもしないので、正確には狩猟補助とでも言おうか。ドライバー、勢子、カメラマン、解体補助としての出猟だ。

 

ハンター仲間Yは僕の会社の先輩だ。朝3時に車で自宅まで迎えに来てもらい、道央の猟場まで1時間半ほど車を走らせ、最寄のICを降りたところでまだ4時半過ぎ、日の出時刻の5時半までにはまだまだ余裕があった。公衆トイレで用を済ませ、装備を整えた。長靴、上下レインウェア、撃ちはしないが一応猟友会のオレンジベストを装着。この段階でそういえばハンター保険入ってねーや、と気付く。猟友会は会費を結局払わなかったしなぁ、どうしよう、事故気をつけよう。

リュックには解体道具と肉をいれる袋などを積め、首からは一眼レフカメラを提げた。銃が無いので身軽だし、気軽だ。

 

いつもならば車で乗り入れてから林道に忍び猟に入るところへ、手前に車をとめて徒歩で入っていき、駐車場付近に出てきている個体をまず狙おうということになった。炭鉱か、近くのトンネルかから出たズリ山が駐車場になっており、いつもそこにはシカの足跡が無数に見られる。夜には森からそこまで出てきているのだが、夜明けとともに山に入ってしまうのだ通例だ。しかし、猟期の初めはシカがスレておらずまだ警戒心が薄く、夜明けすぐなら駐車場に残っている個体がいるのだろうという見込みからそういう作戦をとった。

 

10mほど先を歩くYの後ろを、無線機で交信しつつ私が追う。

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山はところどころで紅葉が始まっていたが、足元の草本はまだまだ勢いがあり、少し歩きにくい。小高い丘をひとつ、二つと登り、そろそろと頂上から顔を出して死角となっている丘の向こうを覗く。私は50mほど離れてその様子を伺っていた。

f:id:hirudoider:20181006053823j:plain探索をはじめて10分ほどたったころ、ボタ山のふもとに白いものがあることに気付いた。メスジカのお尻だ。体は背景に溶け込んでいるが白い尻尾とお尻はやはり目立つ。Yからは丘をはさんだ死角に立っており、Yは気づいていない。シカは私のほうを向いている。しかしまだ距離がある。逃げる様子は無い。

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「そのまままっすぐ進んで丘を越えると、谷底にシカが1頭います。近いです。まだ気付いて無いみたいなんでいけそうです。弾こめていいと思います。」

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はやる気持ちを抑えて、そろそろと慎重に歩いている様子が、遠くからでもよくわかった。あと10mできっと見えるはず、もう少し、もう少し、、、

しかし、お互いが視認できているであろう場所に来ても銃を構える様子がない。と思った矢先にシカのほうが先にYに気付いたようで、奥の方へササを掻き分けて走って逃げて行ってしまった。走り出したシカをようやく見つけたYが銃を構えるが、撃たずに見送ったようだった。まだ朝イチである、ここで無闇に撃ってしまったらほかの場所のシカを警戒させてしまうはずだ。このYの判断が正しかったことは、後で猟果として現れる。

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このとき、私は彼に獲物との距離を具体的に伝えていなかった。Yはシカがいた場所よりさらに奥側にいるんだと思い、手前のシカを見逃してしまったのだ。獲物を逃がしてしまったことは残念だったが、読みが当たって夜明けから30分も経たずに獲物と対峙するところまでいけたこと、途中までは連携がうまくいっていたことをお互い確認し、次からは距離をしっかり確認しよう、と反省して次の猟場へ向かった。